念願の山里暮らしも2ヶ月半が過ぎました。
過ぎていく日々のなか、青空にくっきり堂々とした姿を見せる美しい山や、真っ暗闇の空にちらばるたくさんの星を眺めて…いろいろな思いが浮かびます。
一緒に暮らしている友人におばあちゃんから手紙が届きました。
返事に寄せた彼女の言葉は、いまの私達の暮らしぶりをとても優しく語っていますので許可を得てこちらでご紹介しますね。
たまえさん
先日はお手紙をありがとう。とても嬉しく、お気遣いの言葉に胸が熱くなりました。
体調が上向いているとの事でほんとうに良かったです。その後、おかわりはないですか?
こちらは徐々に寒くなり、朝晩などはすでに冬の気配すら感じる今日この頃です。予想より、冬の訪れが早そうで、慌てて冬支度をしなければいけません。
薪ストーブを入れて、そこで炭をつくり、居間に囲炉裏があるのでそれを使えるように整えたいと思っていますが、のんびり構えていたので間に合うかどうか・・・。
それから薪の調達。今度チェーンソーや斧の使い方の講習会があるので、参加して、怪我をしないようなやり方を学んでこようと思っています。
家の片付けから始まった田舎暮らし。踏み込めないほどに生い茂った雑草や、樹木と分かちがたいほどに深く絡まり合った蔓科の植物を刈り、すすきの根を一つ一つ掘り起こしての開墾作業。そして、畑をつくり秋になってキャベツ、ケール、にんじん、大根などを植えました。あっという間の二ヶ月半でした。
田舎暮らしはまだまだ慣れませんが、最近になってようやく山を眺める余裕が出てきました。空と山はとても美しく、眺めると心が広がっていくようです。
最近気がついた事ですが、田舎暮らしもまた、街での生活同様に忙しくはあるのですが、どこか忙しさの質が違うようだということ。何か問題が起っても、こちらの人達はその受け止め方や対処の仕方が伸びやかであるような気がします。
あぁ。そんな風に優しくやんわりと、様々な事を超えるやり方もあるのだな。
問題を問題にしているのは、私の感じ方一つなのだなと、(初めての事だらけに、つい身構え緊張してしまいがちなのですが、)人々の佇まいに教えられ救われます。
パンはといえば、腕前はやはりまだまだなのですが、日々鍛錬する中で失敗を繰り返し悔し涙しながら、失敗しなければ学ぶ事もないと、自分を励ましながら、なんとか頑張っています。
新しいパンの卸先も開拓し、徐々に外に向かって活動を広めています。これから秋の紅葉シーズンで一盛り上がりする季節なので、来年への足がかりをつけていきたいと思っています。
どうしても冬は寂しくなり商いは難しくなります。しかし、冬は冬の仕事があると、無理に季節に抗うことはせずに、せっかくの田舎暮らしですから、逆に季節を愛でる心を大事に日々を重ねていけたらと考えています。
心配をおかけして申し訳なく思っています。
これから寒くなりますので、たまえさんも風邪などひきませぬよう、どうかご自愛ください。
追伸
昨日、同居している麻美さんのお友達とそのお母さんが遊びにきました。歴史や植物などに造詣が深いお母さんの姿に、たまえさんの事を思い出しました。名前のわからない草木が庭に沢山あるのですが、その方が名前を教えてくれました。小さい紫の実が愛らしい紫式部。山吹(咲いてないのでわかりませんでしたが)。ピラカンサ。南天・・・難を転じる為によく鬼門に植えられるなど、教わりました。
また会う日まで、どうかお元気で。